みなさん、こんにちは。
中流投太郎です。
「住宅ローンは年収の7倍までなら大丈夫」
「手取りの25%以内に抑えれば返済は破綻しない」
ネットやSNSで『住宅ローン 予算』と検索すると、必ずといっていいほどこうした「年収」をベースにした目安が出てきます。マイホーム購入を考え始めたとき、まずは自分の年収からいくら借りられるかを計算してみた、という方も多いのではないでしょうか。
しかし、断言します。
この「年収の〇倍」という基準を鵜呑みにして住宅ローンの借入額を決めるのは、絶対にやめてください。
なぜなら、その計算方法には「あなたの一家のリアルな支出」という、最も重要な要素が1ミリも考慮されていないからです。
どれだけ素晴らしい家を建てても、毎月のローン返済に追われ、子どもの教育費に怯え、日々の生活を切り詰めるような暮らしになってしまっては、何のために家を買ったのか分かりません。
今回は、なぜ「年収の〇倍」を信じてはいけないのか、そして本当に失敗しないための「家計収支から逆算する正しい予算の決め方」を徹底的に解説します。
1. なぜ「年収の〇倍」を信じると危険なのか?
そもそも、ネットに転がっている「年収の6〜7倍なら安心」という言葉は、誰にとっての安心なのでしょうか。
答えは「銀行(金融機関)」です。
金融機関が提示する借入可能額は、あくまで「これだけの年収があれば、統計的にこれくらいまでは『貸してもいい(回収できる可能性が高い)』」という機械的なフィルターに過ぎません。「あなたがその金額を借りて、35年間どんな生活を送ることになるか」までは、銀行は一切責任を持ってくれないのです。
「年収の〇倍」を信じるのが危険な理由は、大きく分けて3つあります。
理由①:同じ年収でも「支出のクセ」は100人100様
例えば、ともに「額面年収700万円」のAさんとBさんがいるとします。
- Aさん夫婦:趣味はインドア、自炊が中心で、普段からコツコツ貯金ができている(毎月の生活費25万円)。
- Bさん夫婦:車が大好きで維持費がかかり、旅行や外食、衣服にもこだわりがある(毎月の生活費38万円)。
この2人に「年収の7倍だから、4,900万円まで借りられますよ」とアドバイスしたらどうなるでしょうか。Aさんは余裕を持って返済できるかもしれませんが、Bさんは一発で家計が火の車になります。
年収という「入ってくるお金」だけを見て、家計の「出ていくお金(支出のクセ)」を無視して予算を決めるのは、あまりにも無謀です。
理由②:「現在の年収」は将来のライフイベントを反映しない
住宅ローンは20年、30年、35年と、長い時間をかけて返していくものです。しかし、現在の年収は「今、この瞬間」の数字でしかありません。
これから先の人生、今の家計の状態がずっと続くわけではないはずです。
- 子どもの教育費:成長するにつれて、教育費や食費は右肩上がりに増えていく。
- 車の買い替え:子育てや買い物のために車が必要になり、10年前後で数百万円単位の買い替え費用が発生する。
- 住宅の維持費:戸建て・マンション問わず、10〜15年が経過すれば外壁・屋根の修繕や給湯器の交換などで100万〜200万円単位のメンテナンス費用が必要になる。
「今の年収なら払える」だけで決めたローンは、こうした「将来必ず来る出費」を無視しているため、数年後にライフステージが変わった瞬間に家計を圧迫し始めます。
理由③:「ペアローン満額」の致命的な罠
共働き夫婦に特に多いのが、お互いの年収を合算した「ペアローン」で上限ギリギリまで借りてしまうケースです。
「夫の年収500万 + 妻の年収400万 = 世帯年収900万だから、その7倍で6,300万円!」
一見、理想の家が買えそうに思えますが、これは非常にハイリスクです。妻が妊娠・出産で一時的に収入が下がったり、育休明けに時短勤務を選択したり、あるいはどちらかが体調を崩して働き方を変えざるを得なくなったらどうなるでしょうか。
「二人が35年間、今のペースで1日も休まず満額稼ぎ続けること」を前提にしたローンは、あまりにも脆い砂上の楼閣です。
2. 年収倍率を捨てろ!シンプル「引き算」で出す適正予算の4ステップ
では、どうやって予算を決めればいいのか。
答えはシンプルです。「毎月手元に入るお金から、生活費や将来の出費を引いて、余った額を出す」という簡単な引き算で計算していきます。
銀行やハウスメーカーのシミュレーションではなく、自分たちの現実の数字をベースにした、世界に一つだけの「本当に返せる額」を導き出す4ステップを紹介します。
ステップ①:夫婦の「リアルな毎月の手取り収入」を把握する
まずはスタート地点となる「入ってくるお金」の把握です。
額面(総支給額)ではなく、税金や社会保険料が引かれた後の「実際の毎月の手取り額」(ボーナスを除いた基本給ベース)を夫婦合算で出します。
例: 夫の手取り28万円 + 妻の手取り17万円 = 毎月の手取り収入 45万円
※育休予定や将来の時短勤務などを考えている場合は、その時期の想定手取り額で安全に見積もるのがポイントです。
ステップ②:家賃を除いた「普段の生活費」を引く
ステップ①の手取り額から、現在の「家賃」を除いた、日々の暮らしにかかっている生活費を差し引きます。
- 食費、光熱費、通信費、日用品費
- 趣味・娯楽費、お小遣い、保険料
- 子どもの習い事・保育料など
ここでポイントなのは「今の賃貸の家賃は除いて計算する」ことです。マイホームを買うと家賃はかからなくなるため、純粋な生活コストだけを引きます。
ステップ③:住宅購入後に「新しく増えるコスト」を引く
マイホームを手に入れると、住宅ローンの返済以外にも賃貸時代にはなかった維持費や将来への備えが発生します。これらをあらかじめ毎月のコストとして差し引いておきます。
- 毎年の税金:固定資産税・都市計画税(月割計算で1万〜1.5万円程度)
- 住宅のメンテナンス費:将来の外壁・屋根の修繕、設備交換への積み立て(月1.5万〜2万円程度)
- 管理費・修繕積立金:(※マンションを購入する場合)
- 将来の教育費・イベント費の貯蓄:学金積み立て、車の買い替え代、家族旅行費用など
ステップ④:最後に残ったお金が「家にぶち込める上限額」!
手取り収入から、生活費と将来の増額コストを引いて「最後に残ったお金」。これこそが、あなたが「家に注ぎ込んでも生活が壊れない毎月の返済額(住居費上限)」です。
計算式にまとめると、非常にシンプルです。
【毎月ローンに使える金額の出し方】
「毎月の手取り収入」 − 「日々の生活費(家賃除く)」 − 「購入後に増えるコスト・将来の備え」 = 家に使える本当の毎月返済額
例えば、手取り45万円から生活費23万円、将来の増額コスト・備えとして7万円を引いて「残り15万円」となった場合、この15万円がローン返済の上限となります。
この金額をベースに、検討している金利(変動・固定)で逆算すれば、あなたが本当に買うべき「真の適正物件価格」が導き出せます。
3. 家計の可視化がもたらす、マイホーム生活の最高のメリット
「こんなに細かく計算したら、予算が下がって希望の家が買えなくなっちゃうかも……」
そう不安に思う方もいるかもしれません。確かに、現実の収支から逆算すると、銀行が提示する「年収の7倍」よりもはるかにつつましい金額になることがほとんどです。
しかし、家計を可視化して決めた予算には、金額の低さを補って余りある「最高のメリット」があります。
メリット①:新生活から「返済の恐怖」が消える
せっかく念願のマイホームを手に入れても、毎月の引き落とし日に「今月も残高ギリギリだ……」とビクビクしながら暮らすのは精神衛生上よくありません。
最初から自分たちの生活費を把握した上で組んだローンであれば、これまで通りに暮らしているだけで家計が破綻することは絶対にありません。子どもに習い事をさせてあげたいときも、家族で旅行に行きたいときも、「ローンがあるから我慢しなきゃ」と罪悪感を抱く必要がなくなります。
メリット②:営業トークに流されず、「自分たちの価値観」で家を選べる
家造りを始めると、ハウスメーカーや不動産会社の営業マンから「月々あと1万円増やせば、この素晴らしい設備がつきますよ!」「年収から見れば全然余裕です!」と悪魔のささやきが聞こえてきます。
もし「年収の〇倍」という曖昧な基準しか持っていないと、「みんなこれくらい借りてるし、いっか…」と流されて予算がどんどん膨らんでしまいます。
しかし、自分たちの家計収支のデータをしっかり持っていれば、「いや、我が家は車の買い替えと子どもの教育費にこれだけ回したいので、建物の予算はここまでです」と、自信を持って断ることができます。他人の基準ではなく「自分たちの価値観」で取捨選択できるようになるのです。
4. まとめ:家を買うことはゴールではなく、暮らしのスタート
住宅ローンを組むときに一番大切なのは、「いくら借りられるか(対 銀行)」ではなく、「いくらなら心地よく返せるか(対 自分)」です。
年収という大雑把な枠組みだけで人生最大の買い物の予算を決めるのは、地図を持たずに見知らぬ土地へドライブに出かけるようなものです。まずは、日頃の家計収支という名の「現在地」を正しく把握すること。ここからすべてが始まります。
家を購入することは人生のゴールではありません。そこから何十年と続く、新しい家族の暮らしのスタートラインです。
「我が家のリアルな収支って、今どうなってるんだろう?」
そう思った方は、ぜひ今週末にでも、夫婦で一緒に通帳やクレジットカードの明細、あるいは家計簿アプリやスプレッドシートを開いてみることから始めてみませんか?その一歩が、30年後の家族の笑顔を確実に守ることになります。

コメント