調達部で得られる知識・スキル・資産:現役調達マンが語る

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みなさん、こんにちは

中流投太郎です。

調達部という部署は、会社の中でも非常に独特な役割を持っている部署ではないだろうか。製品やサービスのコスト削減に直接関わるため、企業の利益に大きな影響を与える可能性がある。一方で、その業務範囲や求められるスキルセットは会社によって千差万別だ。そんな調達部での経験を通じて、どのような知識やスキル、資産が鍛えられるのか?現役調達マンの筆者が紹介してみようと思う。

1.調達部とは?

調達部とは、簡単に言えば、会社が必要とする製品やサービスを外部から購入する役割を担う部署だ。物品の購入から外部業者との契約締結、時にはプロジェクト管理まで、幅広い業務が含まれる。その目的は、コスト削減や品質確保だけでなく、企業の競争力を高めるための戦略的な活動にまで及ぶこともある。

正直、調達部の立ち位置や具体的な役割は、会社によって大きく異なるのではないだろうか。ある企業では調達部が戦略的な役割を果たしている一方で、別の企業では単なる購買部門として機能しており、最悪伝票処理だけをしている様なパターンもある。それでも、調達業務を通じて得られる知識やスキルは、共通して非常に多岐にわたるのでは?と考えます。

2.価格に関する知識

調達部の中心的な役割の一つは、価格交渉だ。これは単に「安く買う」ことを目指すのではなく、価格に含まれるコスト構造を理解し、「適正な価格」で取引を行うことにある。そのためには、製造原価や流通コスト、市場の価格動向など、価格に影響を与える要素を広く理解する必要があるだろう。

例えば、サプライヤーが提示する価格が高い場合、交渉のためには「原材料費が上がったのか」「人件費が増えたのか」など、背景を理解するスキルが求められる。また、他社の動向や市場のトレンドを把握するための情報収集能力も鍛えられるのではないだろうか。

最近の日本でのこのインフレ下では正にここら辺のスキルは非常に重要だ。結局情報に敏感になり、社内や顧客に対して説明できず売価転嫁できず赤字になる事も可能性としてはゼロではない。

価格交渉には、相手の言い分を理解しつつ、自社の利益を確保するためのバランス感覚が必要だ。また、相手に有利な条件を提供する代わりに、他の条件で譲歩を引き出すといった戦略的な思考も重要になる。

3.法律に関する知識

調達業務は契約に基づく取引が基本となるため、法律に関する知識は不可欠だ。特に、以下の法律については、調達部の業務を通じて深く理解することが求められると感じる。

3.1.下請法(下請代金支払遅延等防止法)

下請法は、親事業者が下請事業者に対して不公正な取引条件を押し付けることを防ぐ法律だ。例えば、代金の支払遅延や一方的な返品などが違法行為として規定されている。調達部では、これに違反しないよう、取引条件や支払い期日を適切に管理するスキルが必要だろう。

3.2.建設業法

建設業法は、建設工事に関する取引を適正化するための法律で、特に建設業者との契約を扱う場合には重要だ。調達部では、建設業許可業者を確認することや、適切な契約書を作成するスキルが身に付く。

3.3.派遣法(労働者派遣法)

派遣法は、派遣労働者の保護と雇用の安定を目的とした法律だ。派遣元企業との契約や派遣労働者の業務内容を明確化することが求められるため、労働法に関する基本的な理解が必要となる。

4.契約全般に関する知識

契約書は、調達業務において欠かせないツールだ。契約内容をしっかり理解し、リスクを最小限に抑えることが、調達部の重要な役割となるだろう。例えば、納品期限や支払い条件、瑕疵担保責任など、契約に記載すべき内容を正確に把握する必要がある。

また、取引先と契約条件について交渉する際には、契約書の条項がどのように実務に影響を与えるのかを理解していなければならない。このような経験を通じて、法律と実務をつなぐスキルが鍛えられるのではないだろうか。

ちなみに筆者が所属しているプラントエンジニアリングの業界では契約は非常に重要だ、特に海外との取引となれば基本的に何かあれば契約書に書いてある事で解決する。日本の様に別途協議など通用しない。

また、その商務関連の契約書一式を調達で作成して交渉を行うなど日常茶飯事なのである。そんな毎日を送っていれば必然的に力がつくだろう。

5.ITスキル

調達業務では、ITツールを駆使する場面が多い。そのため、ITスキルも自然と鍛えられるだろう。まあそもそもオフィス勤務の事務屋であるのが殆どなので、この辺のスキルはその辺の営業や技術系の方達より持ってないとダメだと感じる。

5.1.Office製品全般

調達部では、ExcelやWord、PowerPointを駆使して見積もりの比較表を作成したり、契約書を作成したりする。特にExcelのスキルは重要で、関数やピボットテーブルを使いこなすことで業務効率が大幅に向上するのではないだろうか。また、案件の説明の際にはもちろんパワポを使い簡単なまとめを作成して上司や役員に説明をしに行く事もしばしば。日頃から使うソフトだ。

5.2.マクロ作成・プログラミング

業務がルーティン化しがちな調達部では、Excelのマクロを使った業務の自動化が非常に有効だ。これにより、時間を短縮し、ミスを防ぐことができる。

調達の業務は非常にルーチンワークも多いし、定例的に発生するデータ集計や報告も多い。こういった事にいちいち時間も費やしてられないのでいかに自動化して少しでも可処分時間の増大や脳エネルギーのセーブをしなくては仕事が追いつかない。

6.データ整理・分析(数字に関する感覚)

調達部では、価格やサプライヤー情報など、膨大なデータを扱うことが多い。そのため、データを整理し、適切に分析するスキルが身に付くだろう。例えば、コスト削減のためのデータ分析や、購買実績のトレンド分析などが挙げられる。

データ分析の結果を用いて、今後の調達戦略を立てることも可能だ。どのサプライヤーと継続して取引するべきか、新たなサプライヤーを探すべきかといった判断に役立つ。

7.財務分析スキル

サプライヤーの経営状態を評価するためには、財務諸表の読み取りが必要となる。例えば、貸借対照表や損益計算書を使って、取引先の安定性を判断するスキルが求められるだろう。

よく上司からはこの会社は財務的に大丈夫なのだろうか?そんな問いかけも日常茶飯事だ。また、取引先の付き合い方によっては評価の視点も変わる。本質的な事から理解していないと、関係者へ説明ができないのではないのだろうか。

8.対人スキル

調達部では、社内外の関係者とのコミュニケーションが非常に重要だ。取引先との価格交渉や契約内容の調整など、交渉力や折衝力が鍛えられる場面が多いのではないだろうか。また、社内の他部署と連携する機会も多いため、調整力や調和を取るスキルも磨かれる。

調達担当者は、多くの人と関わる中で信頼関係を築き、時には調整役として場をまとめる力も求められるだろう。また、その会議を仕切ったりするファシリテーター的な役割をする事も多い。大分社会人として鍛えられるスキルの一つだ。

9.英語

グローバル化が進む中で、海外のサプライヤーとの取引も増えている。そのため、調達部では英語力が必要になる場面が多いだろう。契約書やメールでのやり取りはもちろん、時には海外出張で直接交渉することもある。

英語でのコミュニケーション能力があれば、選択肢が広がり、より良い条件を引き出すチャンスが増えるのではないだろうか。

10.人脈

調達部で働くことで、多くの取引先や社内の関係者と接点を持つことになる。このような人脈は、キャリアの中で大きな財産になるのではないだろうか。特に、信頼関係を築いた取引先や、同じ目標を共有する社内のメンバーとの関係は、今後の仕事を進める上で大きな助けとなるだろう。

また、調達部で培った人脈は、他部署や他社で働く際にも役立つことが多い。これが一生の資産になる可能性もある。

最後に

調達部で培った知識やスキルは、どれも実践的で応用が利くものばかりだ。調達業務は一見地味に思えるかもしれないが、その経験を通じて得られる資産は、キャリアを大きく後押しするだろう。

調達部での経験を活かし、さらなる成長を目指してみてはいかがだろうか?

以上

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